2015-01-01から1年間の記事一覧

『私の少女』―私と少女の業は深い―

『私の少女』 プロデューサーのイ・チャンドンは、極小の世界から、しばし重苦しい主題を投げかける。『シークレット・サンシャイン』(2007)では、シングルマザーが一人息子を誘拐殺人で失い、その不条理さから宗教に入信するが、そこから二転三転して、「…

予定調和を崩せるか 『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』

♪手にはAK-47 肩にはバズーカ 邪魔する奴らは頭を吹っ飛ばす 俺たちは血に飢えているんだ 殺しには目がないぜ これは、麻薬カルテル(麻薬産業を牛耳る犯罪組織)のボスを民衆のヒーローとして讃えるポップ・ソング(ナルコ・コリード)の歌詞だ。 本作はメ…

『チェンジリング』

モノクロのユニバーサルのロゴで幕を開ける。当時のテクノロジーを反映したのか、冒頭も同じく、そして俯瞰ショットで始まる。本作の内容は真実に基づく。舞台は大恐慌を挟んだロサンゼルス。シングルマザーの母親クリスティンには息子ウォルターがいる。彼…

『ギレルモ=デル・トロ創作ノート 驚異の部屋』書評

ギレルモ・デル・トロは、1964年にメキシコに生まれ、現在ハリウッド映画界の第一線をひた走る映画作家である。彼は随所で宮崎駿、大友克洋、寺田克也、韮崎靖を尊敬しているなど、日本のポップカルチャーからの影響を多分に感じさせる発言をしている。また…